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スタートアップイベントの交流会を「名刺交換会」で終わらせない設計

ネットワーキングの時間をとったのに、名刺が増えただけで次につながらない。そんな交流会を変えるために、事前マッチング、会場づくり、当日のファシリテーション、事後フォローまで、主催者が設計できることを整理しました。

スタートアップイベントの交流会を「名刺交換会」で終わらせない設計

Key pointsこの記事の要点

  • スタートアップイベントのネットワーキングは自然に起きるものではなく、主催者が設計するもの。
  • 事前に「探しているもの」と「提供できるもの」を集め、乾杯の直後に最初の数組を主催者が引き合わせる。
  • 参加者リストを配るのではなく、お互いに選び合った組み合わせだけを開催後につなぐ。

スタートアップイベントのプログラムには、たいてい「ネットワーキング」の時間があります。ピッチや講演のあと、飲み物を片手に参加者が自由に交流する時間です。

ところが、終わってから振り返ると「名刺はたくさん交換したけれど、その後に何も起きていない」ということがよくあります。参加者アンケートの満足度は悪くない。でも、イベントをきっかけに商談や協業が始まったという話は、なかなか聞こえてきません。

ネットワーキングは、「時間と場所を用意すれば自然に起きるもの」ではなく、主催者が設計するものです。この記事では、事前のマッチングから会場のレイアウト、当日の動き方、事後のフォローまで、主催者ができることを順番に整理します。あわせて、実際に運営すると「ここで差がつくのか」と気づく細部を「現場のリアル」としてまとめました。

こんな方に向けた記事です。

  • スタートアップイベントやピッチイベントの企画・運営を担当している
  • 交流会の時間をとっているが、参加者の出会いが次につながっている実感がない
  • 大企業とスタートアップ、投資家など、立場の違う参加者をうまく引き合わせたい

なぜネットワーキングは「名刺交換会」で終わるのか

まずは、ネットワーキングが名刺交換だけで終わってしまうときによく見られる状態と、その原因を整理しておきます。

よくある状態 主な原因
知り合い同士で固まって話している 初対面の人に話しかけるきっかけがない
有名な登壇者や投資家の前に行列ができる 話したい相手が一部に集中し、分散させる仕組みがない
名刺交換と短い自己紹介で会話が終わる お互いに「何を話せばよいか」が分からない
翌日以降、誰からも連絡が来ない 次の一歩を決める仕組みがなく、熱が冷める

どれも参加者の積極性の問題に見えますが、実際には参加者が動きやすいかどうかは、場の設計でほとんど決まります。主催者が設計すべきなのは、積極的ではない大多数の参加者が、無理なく出会えるようにすることです。

最初に決める:誰と誰を出会わせたいのか

ネットワーキングを設計する前に、決めておきたいことがあります。それは、このイベントで、誰と誰が出会えば成功なのかです。

出会わせたい組み合わせによって、必要な仕掛けは大きく変わります。

出会わせたい組み合わせ 参加者が求めているもの 合う仕掛け
スタートアップと事業会社 協業やPoCの相手、導入先 事業会社側の課題を事前に共有し、テーマ別に集まる
スタートアップと投資家 資金調達の相談、事業への助言 投資家の関心領域を名札や配布物で見える化する
スタートアップ同士 採用や組織づくりの悩みの共有、相互紹介 同じフェーズ・同じ悩みのテーブルをつくる
事業会社同士 オープンイノベーションの進め方の情報交換 担当者同士の少人数のセッションを別枠で設ける

1つのイベントで、すべての組み合わせを同じように狙う必要はありません。いちばん大事な組み合わせを1つか2つに絞ると、会場のつくりや当日の動き方まで、判断がぶれにくくなります。

目的は「つながりの数」ではなく「つながりの中身」で決める

「〇人と名刺交換できた」はわかりやすい指標ですが、それを追うと、短い自己紹介を繰り返すだけの場になりがちです。「スタートアップと事業部の担当者が、具体的な課題について一度話す」のように、どんな会話が生まれれば成功かを言葉にしておくと、仕掛けを選びやすくなります。

事前マッチング:当日までに「話す理由」をつくる

効果的なのは、イベントの前に参加者の情報を集めて、当日話すべき相手を事前に見つけておくことです。

申込フォームで、次のような項目を聞いておきます。

  • 今、探しているもの(協業先、導入先、投資家、採用候補、情報交換の相手など)
  • 自分が提供できるもの(実証の場、顧客の紹介、知見、技術など)
  • 当日特に話してみたい立場や領域
  • 主催者から人を紹介してよいかどうかの確認

集めた情報をもとに、事務局が組み合わせをいくつか用意しておきます。すべての参加者に用意する必要はなく、特に出会ってほしい組み合わせから優先しましょう。

マッチングの結果は、事前に本人に伝えておく

組み合わせを用意したら、イベントの数日前に本人へ伝えておきます。「当日、〇〇の領域で実証先を探している△△さんがいらっしゃいます。ご紹介してもよいですか」と一言連絡するだけで、参加者は当日の目的を持って会場に来られます。

紹介される側の了解も先にとっておきます。本人が望んでいない出会いは、気まずい時間になるだけです。

会場レイアウト:人が自然に動ける場をつくる

ネットワーキングの質は、会場のレイアウトに大きく左右されます。同じ参加者でも、テーブルの配置や動線が違うだけで、人の動き方はまったく変わります。

立食用のハイテーブルが間隔をあけて並ぶ会場で、名札をつけた参加者が少人数で話し、奥のドリンクカウンターに向かう人の流れができている様子
テーブルの高さや飲み物の位置で、参加者の動きは大きく変わる

レイアウトを考えるときは、次の点を確認します。

  • テーブルは立食用の高いものを中心にする:椅子に座ると、人はその場から動かなくなる
  • テーブルの数は、人数に対して少なめにする:テーブルに余裕があると、小さなグループが別々に固まる
  • 休憩用の椅子は、壁際に少しだけ置く:疲れた人が休める場所は必要だが、会場の中心には置かない

名札は「話しかける理由」として設計する

名札は、ネットワーキングでいちばん安くて効果の大きい道具です。

色分けも有効です。スタートアップ、事業会社、投資家などの立場ごとに名札やストラップの色を変えておくと、参加者は会場を見渡しただけで、話したい立場の人がどこにいるかを見つけられます。

当日の場づくり:最初の15分で流れが決まる

ネットワーキングの流れは、最初の15分ほどでほぼ決まります。最初に固まったグループは、あとから崩せません。そのため冒頭には、主催者が場を動かす仕掛けを入れておきます。

  • テーマ別のテーブル:「ヘルスケア」「製造業のDX」など、テーブルごとに話題を決めて案内する
  • お題つきの自己紹介:「最近いちばん困っていること」など、話しやすい問いを1つ用意する
  • ピッチ登壇者の待機場所:登壇したスタートアップが、どこに行けば会えるかを明示する

人気の参加者には「場所」と「時間」を決める

著名な投資家や事業会社の役員など、多くの人が話したがる参加者の周りには、すぐに行列ができます。

当日の準備チェックリスト

  • 事前マッチングの組み合わせ表と、引き合わせるスタッフの担当分け
  • 名札(探しているもの・立場ごとの色分け)の印刷
  • テーマ別テーブルの案内表示
  • 人気の参加者のテーブルと時間の案内
  • ドリンクカウンターと休憩用の椅子の配置確認
  • 終了時に「また話したい人」を集める仕組み

ファシリテーション:主催者スタッフの動き方

ネットワーキングの時間、主催者スタッフの多くは受付や片付けに追われ、交流の場にはほとんど関わっていません。でも、ネットワーキングの質を大きく左右するのは、実はこの時間のスタッフの動き方です。

ネットワーキング会場で、目立つ色のストラップをつけた主催者スタッフが、一人で立っている参加者を別のグループに紹介している様子
スタッフの役目は、会話に加わることではなく、人と人をつなぐこと

紹介するときの型

紹介係が参加者を引き合わせるときは、名前と会社名だけでなく、なぜこの2人が話すとよいのかを一言添えます。

  1. 「〇〇さん、こちらは△△の領域で実証先を探している□□さんです」
  2. 「〇〇さんの会社は、ちょうどその領域の現場をお持ちなんです」
  3. 「ぜひ一度、お話ししてみてください」

この一言があるだけで、2人は最初の話題に迷いません。紹介係には、事前に集めた「探しているもの」の一覧を持たせておきましょう。

事後フォロー:つながりを次の一歩に変える

ネットワーキングの成果が表れるのは、イベントが終わったあとです。当日どれだけ会話が盛り上がっても、その後に連絡がなければ、出会いはそこで終わります。

事後フォローは、次のような流れで設計しておくとスムーズです。

タイミング 主催者がやること
終了直前 「また話したい人」を参加者に選んでもらう
当日〜翌日 お礼の連絡と、当日の資料や登壇者の情報を共有する
2〜3日後 お互いに「また話したい」と選んだ組み合わせを紹介する
1ヶ月後 紹介した組み合わせが、その後どうなったかを確認する

よくある質問

参加者が少ないイベントでも、ここまでの設計は必要ですか?

参加者が少ないイベントほど、設計の効果は大きくなります。知り合い同士で固まったとき、輪の外にいる人が目立ちやすいからです。名札の工夫など、手間の少ないものから取り入れてみてください。

オンラインのイベントでも、ネットワーキングはできますか?

オンラインでは、自由な交流はさらに起きにくくなります。少人数のグループに分け、お題を決めて話してもらう形が基本です。事前マッチングとイベント後の紹介をセットにすると、効果が高まります。

紹介係は、どのくらいの人数が必要ですか?

参加者の数や会場の広さによりますが、まずは専任を1人置くところから始めましょう。会場をいくつかのエリアに分けて担当を決めると、目が行き届きやすくなります。紹介係は、参加者の業界や事業をある程度理解している人が向いています。

まとめ

  • ネットワーキングは自然に起きるものではなく、主催者が設計するもの
  • 最初に「誰と誰を出会わせたいか」を1つか2つに絞る
  • 事前の希望は「会いたい人」ではなく「探しているもの」と「提供できるもの」で集める
  • 飲み物は入口から遠くに置き、名札には「今探しているもの」を大きく書く
  • 乾杯の直後に、最初の数組を主催者が引き合わせる
  • 人気の参加者には、場所と時間を決めて座ってもらう
  • 紹介係は運営の仕事を持たない専任にし、紹介したらすぐに離れる
  • 参加者リストを配るのではなく、お互いに選び合った組み合わせだけをつなぐ

DADAでは、スタートアップイベントの企画から当日の運営、ネットワーキングの設計、開催後のフォローまでを一気通貫でご支援しています。交流会をもっと次の一歩につながる場にしたい場合は、お気軽にご相談ください。

Written & edited byDADA Insights 編集部(株式会社DADA)

スタートアップイベントの企画・運営、新規事業のPoC、BtoBマーケティングを支援する株式会社DADAが編集・発行しています。記事の内容についてのご質問はお問い合わせから、会社の情報は会社概要をご覧ください。

公開 2026.10.08 / 最終更新 2026.10.31

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