ピッチイベントに「来てほしい人」を集める、参加者層から逆算する集客設計
ピッチイベントの集客は、人数を集めるだけでは成果につながりません。決裁者や事業部、投資家など「来てほしい人」を狙って集めるための設計を、現場でつまずきやすいポイントとあわせて解説します。

Key pointsこの記事の要点
- ピッチイベントの集客目標は申込数ではなく、「来てほしい層」の来場数で置く。
- 来てほしい人は役職ではなく「今どんな状況にあるか」で描き、決裁者には「誰と会えるか」を伝える。
- 当日は「つなぎ役」が来場者と登壇企業を引き合わせ、開催後は来場者を次の集客の担い手にする。
スタートアップのピッチイベントを開くと決まったとき、多くの担当者が最初に気にするのは「何人集まるか」です。ところが、会場が満席になったのに、終わってみると登壇企業と次の話に進んだ人がほとんどいない。そんな結果になることは珍しくありません。
ピッチイベントの成果を決めるのは、来場者の数よりも「誰が来たか」です。登壇企業と組む可能性のある事業部の担当者、予算を動かせる決裁者、出資を検討できる投資家。こうした人が会場にいて、はじめてピッチは次の商談や協業につながります。
この記事では、狙った参加者層を集めるための集客設計を、企画から当日、開催後まで順を追って整理します。あわせて、実際に運営すると「ここで狙いがずれるのか」と気づくポイントを「現場のリアル」としてまとめました。
こんな方に向けた記事です。
- 事業会社・自治体・支援機関で、ピッチイベントやデモデイの担当になった
- 前回は人数は集まったが、登壇企業の商談や協業につながらなかった
- 決裁者や事業部など、「本当に来てほしい人」に来てもらう方法を知りたい
集客がうまくいかないとき、何が起きているか
「集客に失敗した」と感じるイベントには、大きく2つのパターンがあります。1つは、そもそも人が集まらないこと。もう1つは、人は集まったのに、来てほしい層ではなかったことです。
見落とされやすいのは後者です。人数だけを見れば成功に見えるので、社内でも問題として扱われにくいからです。しかし登壇したスタートアップにとっては、時間をかけて準備したのに商談の相手がいなかった、という結果になります。こうした経験をした企業は、次回の登壇の誘いに乗ってくれなくなります。
来てほしい層が集まらない原因をたどると、多くの場合、次のどれかに行き着きます。
- 来てほしい人が決まっていない:「スタートアップに関心のある方」のように、対象が広すぎる
- その人が来る理由がない:告知の内容が、主催者が伝えたいことになっている
- その人に届く経路を使っていない:告知を出してはいるが、狙った層の目に入っていない
最初に決める:「来てほしい人」を具体的に描く
集客設計の出発点は、来てほしい人を具体的に描くことです。ここがあいまいなままだと、告知の文面もチャネルも決められません。

ピッチイベントの来場者は、主に次のような層に分けられます。主催者の立場によって優先順位は変わりますが、まずはどの層に何人くらい来てほしいかを決めておきます。
| 参加者層 | 主な関心 | 来る理由になるもの |
|---|---|---|
| 事業会社の事業部担当者 | 自部署の課題を解決できる技術やサービス | 自分の業界に関係する登壇企業がいること |
| 決裁者・経営層 | 新しい事業の種、他社の動き | 同じ立場の人と意見交換できること |
| 投資家 | 出資先の候補 | 登壇企業の情報を事前に見られること |
| 自治体・支援機関 | 地域や支援先との連携の可能性 | 地域の企業や他の支援機関とつながれること |
| スタートアップ | 顧客候補や協業相手との出会い | 来場者の顔ぶれが分かること |
層を決めたら、それぞれについて「なぜ来るのか」を一行で書けるかを確かめます。書けない層は、今のままでは来てもらえない層です。
来場者の「来る理由」を設計する
来てほしい人が決まったら、その人が来る理由を設計します。ここで大切なのは、主催者が伝えたいことではなく、来場者が得られるものから考えることです。
告知の文面は、イベントの趣旨や主催者の思いから書き始めがちです。でも、来場者が知りたいのは「行くと何が得られるのか」です。
- どんな領域の、どんな段階のスタートアップが登壇するのか
- 誰と会えるのか、どんな人が来るのか
- 登壇企業と個別に話す時間はあるのか
- 参加するのに、どれくらいの時間が必要なのか
最後の点も意外と大切です。決裁者や事業部の担当者にとっては、半日の予定を空けるのは簡単ではありません。「ピッチは前半の1時間」「懇親会からの参加も可能」のように、参加の仕方を選べるようにしておくと、忙しい人ほど来やすくなります。
参加者層ごとに、届くチャネルは違う
来る理由を設計しても、その情報が狙った人に届かなければ意味がありません。参加者層ごとに、情報が届く経路は大きく違います。
| 参加者層 | 届きやすいチャネル | ポイント |
|---|---|---|
| 事業会社の担当者 | 業界団体、取引先からの紹介、業界メディア | 自分の業界に関係があると分かる言葉で伝える |
| 決裁者・経営層 | 役員や上司からの直接の招待 | 案内状より、人から人への声がけが効く |
| 投資家 | 個別の連絡、投資家同士のつながり | 登壇企業の情報を早めに共有する |
| 自治体・支援機関 | 支援機関同士のネットワーク | 連携や地域への効果を伝える |
| スタートアップ | 登壇企業や支援機関からの紹介 | 来場者の顔ぶれを具体的に伝える |
イベント告知サイトやSNSは、幅広く知ってもらうには便利です。ただし、決裁者や事業部の担当者が、こうした場所でイベントを探していることは多くありません。来てほしい層ほど、人を介した招待でしか動かないと考えておくと、チャネルの選び方を誤りにくくなります。
申込フォームで「誰が来るか」をコントロールする
申込フォームは、ただ情報を集めるためのものではありません。設計しだいで、来場者の顔ぶれを整える仕組みになります。
会社名・部署・役職に加えて、「関心のある領域」「イベントで探しているもの(協業先、出資先、情報収集など)」「話してみたい登壇企業」を聞いておきましょう。当日の席配置や、来場者同士の紹介にそのまま使えます。
申込の内容は、受け付けたらそのままにせず、事務局で定期的に確認します。来てほしい層の申込が足りていなければ、その層に向けた個別の声がけを増やすなど、開催前に打ち手を変えることができます。
申し込みから当日までの「離脱」を防ぐ
無料のピッチイベントでは、申し込んだのに当日来ない人が一定数出ます。せっかく来てほしい層の申込を集めても、当日いなければ意味がありません。
申し込みから当日までの連絡は、次のように組み立てるのがおすすめです。
| 時期 | 送る内容 | ねらい |
|---|---|---|
| 申込の直後 | 参加確定の連絡と、カレンダー登録の案内 | 予定として押さえてもらう |
| 1〜2週間前 | 登壇企業の紹介と、その人に合いそうな登壇企業の案内 | 参加する理由を思い出してもらう |
| 前日 | 会場への行き方、受付の方法、当日の流れ | 迷わず来られるようにする |
| 当日の朝 | 受付時間と、遅れて来る場合の入り方 | 途中からでも来てもらう |
開催前のチェックリスト
- 参加者層ごとの申込状況を確認し、足りない層への声がけを追加した
- 登壇企業に招待枠と招待用の文面を渡した
- 社内の事業部に、関係する登壇企業を個別に伝えた
- 申込者の関心をもとに、会ってほしい登壇企業を案内した
- 名札や席配置に、申込フォームの情報を反映した
当日:来た人を「つなげる」までが集客
来てほしい人が会場に来ても、その人が登壇企業と話さずに帰ってしまえば、集客の目的は果たせません。当日の会場づくりまでを集客設計の一部と考えます。

- 受付で、申込時の関心に合わせた登壇企業の一覧を渡す
- 名札に、会社名だけでなく関心のある領域を書く
- 懇親会では、登壇企業ごとに話せる場所を決めておく
- 面談を希望する来場者のために、その場で日程を決められる仕組みをつくる
開催後:次回の集客の資産にする
イベントが終わったら、来場者の情報を整理して、次回の集客に生かします。来場者の満足度だけでなく、次のような観点で振り返ります。
- 来てほしい層は、それぞれ狙いどおりに来たか
- どのチャネルから来た人が、登壇企業との面談につながったか
- 申し込んだのに来なかった人は、どの層に多かったか
- 登壇企業は、来場者の顔ぶれに満足していたか
最後の点は、登壇企業に直接聞いておくのがおすすめです。「会いたい相手に会えたか」という登壇企業の声は、次回の登壇企業を集めるときの説得材料にもなります。
よくある質問
来てほしい層が少なく、人数が集まらないと会場がさびしくなりませんか?
会場の広さを、来てほしい層の人数に合わせて選ぶのがおすすめです。大きな会場に少ない人数より、小さめの会場がほどよく埋まっているほうが、来場者同士の会話も生まれやすくなります。人数を埋めるために対象を広げるのは、最後の手段にしましょう。
オンライン配信もしたほうがよいですか?
配信は、遠方の人や会場に来られない人に届けるには便利です。ただし、配信があると「オンラインで見ればいい」と考え、来てほしい人が会場に来なくなることもあります。配信をする場合は、懇親会や個別面談など、会場でしか得られないものをはっきり伝えておきましょう。
集客を外部に任せても大丈夫ですか?
告知や申込の管理、リマインドなどの実務は、外部のパートナーに任せることができます。一方で、「誰に来てほしいのか」を決めることと、決裁者や事業部への声がけは、主催者自身が担うのが理想です。人から人への招待は、主催者の顔があってこそ効果を発揮します。
まとめ
- 集客の目標は「申込数」ではなく「来てほしい層の来場数」で置く
- 来てほしい人は、役職ではなく「今どんな状況にあるか」で描く
- 自社の事業部には、関係する登壇企業を添えて個別に声をかける
- 決裁者には「誰と会えるか」を伝え、登壇企業には招待枠を渡す
- 対象を絞って承認制にし、1〜2週間前に「会ってほしい登壇企業」を伝える
- 当日は「つなぎ役」が来場者と登壇企業を引き合わせ、開催後は来場者を次の集客の担い手にする
DADAでは、ピッチイベントの企画から集客設計、当日の運営、開催後のフォローまでを一気通貫でご支援しています。来てほしい人に確実に来てもらうための集客に悩んでいる場合は、お気軽にご相談ください。


