アクセラレーションプログラムの運営・進め方:開催6ヶ月前から逆算する準備ガイド
事業会社が初めてアクセラレーションプログラムを立ち上げるときに、いつまでに何を決めればよいのか。運営の進め方と開催6ヶ月前からの準備を時期ごとに整理し、現場でつまずきやすいポイントと、その防ぎ方をまとめました。

Key pointsこの記事の要点
- 初めてのアクセラレーションプログラムは、デモデイから逆算して開催の6ヶ月前に準備を始める。
- 契約のひな形、採択企業ごとの推進担当、PoC予算の出どころは、募集を始める前に決めておく。
- 募集テーマは事業部の課題の言葉で書き、審査では「実証できる現場」と「協業に割ける担当者」を先に確かめる。
「スタートアップと協業したい。まずはアクセラレーションプログラムを開いてみよう」。そう決まったとき、最初につまずきやすいのが準備の段取りです。募集を始めてから「審査の基準が決まっていない」「事業部の担当者がつかまらない」と慌てるケースは少なくありません。
この記事では、デモデイ(最終発表会)から逆算して、開催6ヶ月前から何をどの順番で決めていけばよいかを整理します。教科書的な手順だけでなく、実際に運営すると「ここで止まるのか」と気づくポイントを「現場のリアル」としてまとめました。
こんな方に向けた記事です。
- 社内でアクセラレーションプログラムの担当になったが、運営の経験がない
- オープンイノベーションの取り組みを、単発のイベントではなく協業につなげたい
- 事業部や経営層を巻き込みながら、無理のないスケジュールを組みたい
なぜ6ヶ月前から動くのか
アクセラレーションプログラムは、募集・審査・メンタリング・デモデイと、いくつもの工程が連なっています。どれか1つが遅れると、その後ろがすべて詰まります。
特に時間がかかるのは、次の2つです。
- 社内の合意づくり:募集テーマや協業のゴールを、事業部と握るまでに時間がかかる
- スタートアップの集客:よいスタートアップほど忙しく、告知から応募までに検討期間が必要
社内の合意には、事業部の会議体や決裁のタイミングが関わります。月に1回の会議でしか話せない相手がいれば、それだけで1〜2ヶ月はかかります。スタートアップ側も、資金調達や既存顧客への対応で手一杯のことが多く、「募集を見つけたその日に応募する」ことはまれです。
最初に決める:プログラムの型
準備に入る前に、どんな型のプログラムにするかを決めておくと、その後の判断がぶれにくくなります。代表的な型は次の3つです。
| 型 | 目的 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 協業型 | 事業部とスタートアップでPoCや業務提携を進める | 事業部に具体的な課題や実証の場がある |
| 出資検討型 | 出資を前提に、事業の成長を一緒につくる | CVCや投資の枠組みがすでにある |
| 共創・探索型 | 新しい事業の種を探し、テーマそのものを広げる | 事業部の課題がまだはっきりしていない |
初めての開催では、協業型から始めるのがおすすめです。事業部の課題が起点になるので、テーマが具体的になり、スタートアップにとっても応募するメリットが分かりやすくなります。
体制と役割分担
プログラムは、事務局だけでは回りません。誰が何を担うのかを最初に決めておきましょう。
| 役割 | 主な担当 | 担うこと |
|---|---|---|
| 事務局 | オープンイノベーション担当、外部の運営パートナー | 全体のスケジュール管理、募集・審査・当日の運営 |
| 事業部 | 協業する部署の担当者 | 募集テーマの設計、審査、メンタリング、協業の検討 |
| 経営層 | 担当役員 | プログラムの位置づけの承認、デモデイへの参加、協業の判断 |
| メンター | 社内外の専門家 | 採択企業への助言、事業部との橋渡し |
全体スケジュール
| 時期 | やること | 決めておきたいこと |
|---|---|---|
| 6ヶ月前 | 目的とゴールの設計 | 募集テーマ、協業のゴール、関わる事業部、契約ひな形 |
| 5ヶ月前 | 募集の準備と告知 | 募集ページ、告知チャネル、応募条件 |
| 4〜3ヶ月前 | 応募受付と審査 | 審査基準、審査員、採択数 |
| 3〜1ヶ月前 | メンタリング | 面談の頻度、事業部の推進担当 |
| 当日 | デモデイ開催 | 来場者、配信の有無、当日の進行、面談設定の仕組み |
| 開催後 | 協業検討のフォロー | 検討の進め方、PoC予算、振り返りの場 |
6ヶ月前:目的とゴールを事業部と合意する
最初に決めるのは「何のためにやるのか」です。ここがあいまいなままだと、審査でもメンタリングでも判断がぶれます。
決めておきたいこと
- 募集テーマ(どの領域のスタートアップと組みたいか)
- 協業のゴール(PoCの実施、業務提携、出資など)
- 関わる事業部と、その中の担当者
- 成果をどう測るか(採択数、PoCに進んだ件数、協業の契約数など)
募集テーマは、「〇〇領域のスタートアップ」のような広い書き方ではなく、事業部が抱えている課題の言葉で書くのがコツです。たとえば「物流」ではなく「倉庫内のピッキング作業の負荷を減らしたい」のように書くと、スタートアップが自社の技術と結びつけて考えやすくなります。
よくあるつまずき
- テーマを事務局だけで決めてしまい、採択後に事業部が「うちの課題とは違う」と感じる
- ゴールが「スタートアップとつながること」だけで、その先の協業の形が決まっていない
- 成果の測り方を決めておらず、開催後に社内へ成果を説明できない
5ヶ月前:募集の準備と告知を始める
募集ページでは、スタートアップが「応募する理由」が伝わることが大切です。
- 事業部が提供できるリソース(顧客基盤、技術、販路、実証の場など)
- 採択後に何が起きるのか(メンタリングの内容、デモデイ、その後の協業の進め方)
- 応募条件と、応募から採択までのスケジュール
- 知的財産やデータの扱いについての基本的な考え方
最後の点は見落とされがちですが、スタートアップにとっては応募を判断する大きな材料です。細かな条件は個別に決めるとしても、基本的な方針を示しておくと安心して応募できます。
告知チャネル
告知は、募集ページを公開するだけでは足りません。次のようなチャネルを組み合わせます。
- スタートアップ支援機関やVCへの紹介依頼
- 条件に合いそうなスタートアップへの個別の声がけ
- 募集説明会(オンライン)の開催
- 自社のSNSやプレスリリース、業界メディアでの告知
特に効果が大きいのは、1と2です。募集テーマに合うスタートアップを事務局側でリストアップし、一社ずつ声をかけていくと、応募の質がぐっと上がります。
4〜3ヶ月前:応募受付と審査
審査基準は、募集を始める前に決めておきます。応募が集まってから基準を考えると、どうしても「なんとなくよさそう」で選ぶことになり、事業部の納得感も得にくくなります。

- 審査の観点(事業性、テーマとの適合度、協業の実現性など)
- 観点ごとの評価方法と重みづけ
- 審査員(事業部、経営層、外部の専門家)
- 採択数と、採択の判断をする会議の日程
審査は2段階で
審査は、書類審査と面談審査の2段階にすると、事業部の負担を抑えながら納得感のある選考ができます。
| 段階 | 見るポイント | 主な審査員 |
|---|---|---|
| 書類審査 | テーマとの適合度、事業の実績や体制 | 事務局、事業部の担当者 |
| 面談審査 | 協業の具体的なイメージ、チームの熱量、スピード感 | 事業部長、経営層、外部の専門家 |
面談審査では、スタートアップのピッチを聞くだけでなく、「事業部とどんな協業ができそうか」を一緒に話す時間をとるのがおすすめです。採択後のメンタリングがスムーズに始まります。
よくあるつまずき
- 審査員ごとに評価の観点がばらばらで、議論がまとまらない
- 採択数を決めておらず、「せっかくだから」と多く採択して、メンタリングが回らなくなる
- 不採択の連絡が遅れ、スタートアップとの関係が悪くなる
採択数は、応募の数ではなく、事業部が責任をもって伴走できる数から決めましょう。不採択のスタートアップにも、できるだけ早く、丁寧に結果を伝えます。今回は合わなくても、次のプログラムや別の事業部との協業につながることがあります。不採択の企業の情報を「将来の協業候補リスト」として整理しておくと、次回の個別声がけにもそのまま使えます。
3〜1ヶ月前:メンタリングで協業の形をつくる
採択したスタートアップと事業部が、デモデイまでに協業の形を具体化していく期間です。

面談の日程調整は想像以上に手間がかかります。最初に面談の頻度と日程をまとめて押さえておくと、途中で止まりにくくなります。
メンタリングの進め方の例
- キックオフ:協業のゴールと、デモデイまでに目指す状態を事業部とスタートアップで確認する
- 定例の面談:2週間に1回程度、検討の進み具合と次にやることを確認する
- 中間の振り返り:期間の半ばで、協業の方向性を見直す。必要なら事業部の別の担当者や他部署を巻き込む
- デモデイの準備:発表内容とストーリーを整え、ピッチの練習をする
メンタリングでは、事務局が議事録と次のアクションを記録しておくことが大切です。開催後に協業検討を引き継ぐときや、社内に成果を報告するときに役立ちます。
当日:デモデイを開催する
デモデイは、成果を社内外に示す場であると同時に、次の協業相手との出会いの場でもあります。
- 誰に来てほしいか(経営層、他の事業部、投資家、メディアなど)
- 会場だけで開くか、オンライン配信もするか
- ピッチのあとに、来場者とスタートアップが話せる時間をとるか
当日の準備チェックリスト
- 進行台本と、登壇順・持ち時間の最終確認
- 会場と配信の機材テスト(リハーサルの時間を必ずとる)
- 受付と来場者リストの準備
- ネットワーキングの時間と場所
- 来場者アンケートと、面談希望を集める仕組み
開催後:協業検討をフォローする
デモデイで終わりにせず、協業検討の進み具合を事業部と定期的に確認します。開催後の動きまで追えていると、次回のプログラムの企画や、社内への成果報告がぐっと楽になります。
振り返りでは、次の観点で整理しておくと、次回の改善につながります。
- 応募数と応募の質は、テーマや告知チャネルに見合っていたか
- 事業部の関わり方に、無理や不足はなかったか
- 協業検討に進んだ件数と、その後の進み具合
- 来場者やスタートアップからの声
社内への成果報告では、デモデイの写真や配信の録画が役立ちます。数字だけの報告より、事業部の担当者がスタートアップと並んで登壇している姿を見せるほうが、次回の予算や協力を得やすくなります。
よくある質問
初回はどれくらいの規模で始めればよいですか?
初回は、採択数を絞って小さく始めるのがおすすめです。事業部が無理なく伴走できる数にとどめることで、一社一社との協業検討を深められます。規模を広げるのは、運営の型ができてからでも遅くありません。
事業部の協力がなかなか得られません。
まずは、事業部が今抱えている課題を聞くところから始めましょう。プログラムを「事務局の企画」ではなく「事業部の課題を解決する手段」として位置づけられると、協力を得やすくなります。経営層からプログラムの意義を発信してもらうのも効果的です。
運営をすべて社内で行うべきですか?
募集テーマや協業の判断など、事業部が担うべき部分は社内で持ちつつ、集客や事務局の実務、当日の運営は外部のパートナーに任せる形も一般的です。社内の担当者が、協業の検討そのものに時間を使えるようになります。
まとめ
- アクセラレーションプログラムは、デモデイから逆算して6ヶ月前から準備を始める
- NDAとPoC契約のひな形、採択企業ごとの推進担当、PoC予算の出どころを開催前に決めておく
- 募集テーマは事業部の課題の言葉で書き、対象外のものも明記する
- 募集ページには、話せる相手の顔と名前を載せる
- 審査は加点の前に「実証できる現場」と「協業に割ける担当者」を確認する
- デモデイは事業部と一緒に登壇し、成果は翌週の面談数で測る
DADAでは、プログラムの設計から事務局運営、デモデイの開催、開催後のフォローまでを一気通貫でご支援しています。初めての開催で何から手をつければよいか分からない場合も、お気軽にご相談ください。


